University College London(UCL)留学記:ゼロイチが一番難しいという話

こんばんは。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。  


こちらに戻って一週間経たない位ですが、2学期目も終盤に差し掛かっているため、課題エッセーの期限やテストが近づいてきています。 


 約十年ぶりに学生に戻って感じていることがあります。  


「文章やプレゼンテーション用スライドは、最初にゼロから作ることが、誰かの作ったモノを修正することに比べて非常に難しい」ということです。 


「そんなのは当たり前でしょう」と言われそうですが、思っている以上に「ゼロイチ」と「他人の書いた文章の修正」の間の難易度の差は大きいです。 


職務経験が増えると、自分で文章をゼロから書くよりも、後輩などの書いた文章を添削する機会が増えます。  

人の書いた文章のあらを探すのは簡単だったりします。 「こうした方がもっと伝わりやすいのに」と修正点を見つけて、適切な形に直すことは難くないです。仮に20本も30本も筆頭著者として論文を書いたことのある先生の文章や、作家さんの文章(特にドラフト版であれば)を見せられても「より伝わりやすい」文章に修正することは可能だと思います(作家さんの文章で大切なのはわかりやすさだけでなく、美しさでもあったりしますが)。 


これは何を意味するかと言うと

「誰かの書いた文章をより適切(に感じる)に修正できたとしても、その『誰か』より自分が賢いとか優れているという意味ではない」ということです。 

当たり前ですがついつい錯覚しがちです(もしかしたら私だけかもしれませんが・・・)。  


人の文章を修正していると、「この文章の展開の仕方だと、読者が話の筋を見失ってしまう」とか思ったりすることがあります。

ただ多くの場合は、文章を書いた本人の中では話の筋が非常に明確なため、読者を置き去りにしてしまっただけの可能性もあります。


そういうことが続くと、なんだか自分が文章を書くのが上手くなったように錯覚してしまう。←私だけかもしれませんが。。。 


多くの場合、職業上の立場が上なので、文章のチェック・修正をしているというだけで、修正を受けた側の人間は、表面上「ありがとうございました。非常にクリアになりました。」と言っていても、心の中で『その表現はそういう意図で書いたものじゃないのに。キチンと書かれている通りに読んで欲しいな』と思っているかもしれません。 


これらの結果、 

①人の書いた文章を修正できるようになる→なんだか文章が上手くなった気がする 


②人のリハビリを見て、もう少しこうした方が良いのにと見えるようになる→なんだかリハビリが上手くなった気がする 


③さらに、年齢を重ねると、誰かに指導を受ける機会が少なくなる(全くなくなる)。


こうしたことから、勘違いが加速してしまうように感じます。 


今、ゼロから文章を書く、論文を書くなどしていると、「あ~、文章って上手にかけないな」とよく思います。 ゼロイチが非常に難しい作業であることを忘れないように本当に気を付けないと、頑張って文章を書いてきた人(後輩など)にリスペクトを欠いた対応をしてしまうことになりかねません。



ですので、自戒を込めて 

ゼロイチはとても難しい作業なので、仮に添削を依頼された文章が拙い(と感じる)ものであったも、文章の構成が破綻していて(いるように感じて)も、自分の手を入れたことで文章が見違えるような名文になって(気がして)も、

「ゼロイチはメチャクチャ難しい作業だから、それは普通にあることだよね」

とリスペクトを欠いた対応をしないように気を付けたいです。 



今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます 。 

理学療法士 倉形裕史 






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