おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
数回に渡って、リハ専門職、整体師や、カイロプラクターなどが謳う、『内臓マッサージ』、『子宮マッサージ』、『産後の骨盤矯正』、『妊活整体』、『妊活ヨガ』に関して書いています。
ここ何回かは、子宮マッサージを行っている整体院のweb siteで取り上げられていた論文に関して書いています。
この研究の質はあまり高いものでなく、この研究の結果をもってマッサージが効果があるとは言えないということを書きました。
なぜこの研究の質があまり高くないのかと言うと、『ランダム化』と『盲検化』が行われていないためです。
前回は、『ランダム化』に関して書きました。 今回は『盲検化』に関して書きます。
盲検化というのは、簡単に言うと、 「誰が本当の治療を受けたかわからなくする操作」です。
お薬の研究などでは、『本物の薬を飲むグループ』と『偽薬(一般的に砂糖玉)を飲むグループ』に分けたりします。この偽薬は、本物の薬そっくりに作られ、患者さんも、その薬を与える医師も、誰が本物の薬を飲んだかわからくなっています。
なぜ、この様なことを行う必要があるのか?それはプラセボ効果があるためです。
以前の記事でも書きましたが、プラセボ効果とは、医師、患者が効果を期待することで体や心に起こる効果です。
この効果は、馬鹿にできるものではなく、時に降圧剤や鎮痛剤と同じように効いたりします。
この研究におけるプラセボ効果は、『マッサージを受ける患者が効果を期待することで体外受精の確率が高まる』ということです。 期待や思い込みで体外受精の確率が変わるのか?正確には分かりません。。。<m(__)m>
ただ、この論文で考察されているところでは、ストレスは体外受精の成否に影響を与えるかもしれないとのことでした。ストレスに対する反応などはプラセボ効果の影響を最も良く受けるものの一つです。
ただ、困った問題があります。プラセボ効果が体外受精の確率に影響を与えるとして、患者さんに『誰がマッサージを受けたかわからないようにする』ことはとても難しいです。 効果の期待できないマッサージを提供して、『偽の治療をされたグループ』にすることも考えられます。
しかし、この論文にも書いてある通り、どのようなマッサージが効果的か?というのも分かっていないよう状況です。このような形で『偽の治療を受けたグループ』を設定することは難しいです。 ここは研究するにあたって、なかなか制御するのが難しいところなので一旦置いておきます。
また、この研究では患者さんに関しても、『研究する側』に対してもどのように盲検化を行ったかの記載がありません。 もしも『研究を行う側』も体外受精を行う際に、誰がマッサージを受けたのかがわかっていたら、ここにも意識的・無意識的な操作が入り込む余地があります。
私は体外受精の過程に関してはよく分からないので、どの程度、機械が行って、どの程度が人のスキルが影響するのかはなんとも言えません(*_*;
ですが、例えば受精卵を選ぶ際に、『マッサージを受けたグループ』の患者は、より慎重に質の高い受精卵が吟味されたり、体外受精の際も丁寧に処置が行われるということは起こり得るかもしれません。
プラセボ効果がどの程度影響するかなどは、正確なところは誰にもわかりません。しかし、外部の人間が見た際に、「これはプラセボ効果によるものではない(少なくとも、その可能性は低い)」と説得力を持たせるには、プラセボ効果の影響を最小限にできる形で研究を設計して欲しいです。特に体外受精に関わることなど、悩んでいる方が多い分野であれば尚更です。
この論文にはどのように「盲検化」を行ったかの記載はありません。 その場合は、『特に盲検化に配慮していません』と捉えられます。
「誰がマッサージを受けたかわからなくする」など、制御できない点に関しては同情の余地はありますが、そこで厳密さが損なわれる分、他の点に関してはしっかりと盲検化を行って欲しかったです。
『ランダム化』、『盲検化』の話は、お終いです。
長くなりましたので次回に続きます。
この研究の内容と解釈に関する話はもう少し続きます。
私は、面白いんですが、他の方が興味がある話題なのかは、全く自信がありません。。。(;'∀')
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
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