おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
イギリスで勉強したことを共有したくてこのテーマで記事を書こうと考えました。
前回は、『日本の理学療法士も系統的に学ぶことで、理学療法士に必要な診断スキルを身につけることが出来る』ということを書きました。
ここからは、私見です。
日本で、病院以外の場所でリハビリを提供するリハビリ専門職に必要な診断は、諸外国の理学療法士が行う診断とも一部違っていると考えています。理学療法の適応の有無を調べる以上に、『お客さんが訴える症状の緊急性を判断する』というスキルが必要であると思います。
例えば、お客さんが『風邪をひいたみたいだ』と訴えられた時に、どう考えて、何を調べるか?
医師は診断名を付けて、治療方針を決めます。
診断:風邪で間違いなさそうだから、
治療方針:この薬を出そう。
今後の行動の依頼:症状がなくなれば来なくていいor○○日間経っても熱が下がらなかったら、また受診して下さい』
などは最低限行われると思います。生活のアドバイスや今後の見通し(いつ頃、治りそうか?)などに関しての話があるかも知れません。
風邪が正確には上気道炎であるとか、上気道炎に薬を処方する必要があるのかなどの議論はおいておきます。シンプルにするためにこの様に書きました。
一方、リハビリ専門職がお客さんに『風邪をひいたみたい』と言われたら、診断や治療方針を決めるのではなく(それは医師の仕事なので)、
このお客さんは、
・すぐに受診を勧めるべきか?
・注意して経過を観察して良いか
・とりあえずは緊急性が低いようなので、心配しなくて良さそうか?
を判断することが求められます。
イメージとしては 家に帰らせて良いか。それとも入院させるかを判断するのが重要な救急外来での診察・診断であったり、災害現場で素早く患者の重症度を見分けるためのトリアージに近いかも知れません。
少し大げさに書いたかもしれませんが、既に訪問などの現場で看護師さんやリハビリ専門職の方々が行っていることでもあります。
ただ、システマティックにトレーニングを受けていないため、多分に経験によって影響を受けてしまっていると思います。 例えば、自身が長く携わった科で経験することの多い疾患に思い浮かべやすいなどはあると思います。循環器に長く携わった方は、お客さんが共通を訴えた時に、何よりもまず先に「心筋梗塞」を思い浮かべてしまうなどです。
野口善令先生と福原俊一先生という医師が『誰も教えてくれなかった診断学』という書籍の中で
・頻度:目の前の患者が疾患を有する確率
・時間の軸:緊急性、治療のgolden timeと可逆性
・進行性 アウトカムの軸:アウトカムの重篤性、非可逆性
という観点から、7~9個程度の鑑別診断のための疾患名リストを想起することを推奨しています。
また、前野哲博先生は『症状対応ベスト・プラクティス』の中でお客さんの症状を体系的に聴取するために「LQQTSFA」という7項目をあげています。
L(Location):部位
Q(Quality):性状
Q(Quantity):程度
T(Timing):時間経過(発症時期、持続時間、頻度、変化など)
S(Setting):発症状況
F(Factors):寛解因子・増悪因子
A(Associated symptoms):随伴症状
リハビリ職種もこれらの要素を考慮してお客さんの重症度を評価して、医師や看護師さんとコミュニケーションできるスキルを身につけることができれば、お客さんの利益になりそうです。
このシリーズはこれで終了です。 最後は少し抽象的な話で終わってしまいましたので、近いうちに風邪を訴える利用者さんに対する具体的な判断の流れなどを書ければと思います。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
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