以下に書くことは、私の所属先などとは一切関係のない私の私見であり、文責は全て倉形個人にあります。
同じテーマの①はこんな感じです。
この話の続きとして、
1. 相関関係と因果関係の区別は簡単じゃない
私たちは、サイエンス(研究デザインや統計)の力を借りないと、この二つを区別することがとても困難です。
に関して書きます。
二つの事柄が同時に起きると、我々はその2つの間に何らかの因果関係があると考えがちです。『事柄Aが引き金となって、事柄Bが起きたんだ』と。
でも、全くの偶然でも二つの事柄が同時に起きることがあります。
下のグラフは、この話題で使われることの多い『ニコラス・ケイジの年間映画出演本数』と『プール溺死者の数』を示したものです。
非常にきれいに一致しています。
それともう一つ、下のグラフは『海賊の数』と『地球温暖化』の関係をプロットしたものです。
これには、さらに進んだ主張があって、
現代においても、『海賊の数が増える時期』には『気温が下がる』んだからやっぱり、海賊の数と気温には因果関係があるんだと。現代において『海賊が増える時期』というのは、ハロウィンの時期だそうです(つまり、海賊のコスプレをする人が増える)。この時期は、北半球は冬なので確かに気温は下がります。
これらのデータを基に、子供をプールで亡くした親御さんが『もう、ニコラス・ケイジを映画で使うな!!』と主張したり、温暖化対策の専門家が『政府は、温室効果ガスの排出制限なんてどうでもいいから、海賊を増やす政策を実施しろ』と要望を出したら、誰も相手にしないでしょう。この二つの事象はあまりにかけ離れすぎて、誰もが『ただの偶然』とわかるからです。
悩ましいのは、もしこのグラフが『ニコラス・ケイジの年間映画出演本数』と『プール溺死者の数』ではなく、『○○法(実際は効果の無い治療)の実施回数』と『症状の変化』だったらどうでしょう?ということです。きっと多くの人は、『この治療法は、効果が抜群だ』と思ってしまうのではないでしょうか?ただ、偶然、治療したタイミングと症状変化のタイミングと一致しただけなのに・・・。
①『ニコラス・ケイジの年間映画出演本数』と『プール溺死者の数』・・・偶然の一致
②『実際は効果の無い治療の実施回数』と『症状の変化』・・・・因果関係あり
①、②の判断は、ただの主観です。この主観の罠にハマらないためには、サイエンス(研究デザイン、統計)の力を借りなければいけません。
つまり、日々の個人の臨床経験だけでは、症状の改善が『偶然の一致』なのか、『因果関係(治療により症状が改善した)』のかはわかりようがないです。
ですので、くれぐれも臨床経験の解釈は慎重に・・・・
最後まで読んで頂きありがとうございました
理学療法士 倉形裕史
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