『経験による意思決定』の価値は下がってきているし、これからも下がり続けます:大阪市の教育関連のニュース記事から考えたこと①

おはようございます。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。


記事の数が100を超えました。自分では寡黙な方だと思っておりますが、しゃべりたいことが結構あるみたいです。。。


 今日は、先日ネットで見つけた興味深い記事に関して書きます。


 初めに断りを入れますと、政治批判ではありません。そもそも私は大阪市民ではないので、大阪市の政策に対して何かいう立場ではありませんし、公の場(インターネット上もいまや公の場と言えます)で政治家や政治に関して何か言う気もありません。ただ、統計や根拠に基づく意思決定の専門家としてこれらのニュースを題材に話をしたいだけです。


簡単にまとめると、・・・・ 

大阪市長

「県の平均の成績が全国最下位なのは悔しいで~。教師に成果報酬制度(成績の上がり下がりでボーナス額を調整)を導入して、テストの結果を改善するやで( ゚Д゚)!!」 

             ↓

教育委員会

「そんなの無茶ですやん。生徒の成績は、家が裕福かどうかで決まりやすやん。せやから、市長、先生の成果報酬制度導入の前に地域の経済格差を埋めてや~(*_*;)」 

というやりとりがあったという話です。


ちょっと論点というか議論の階層がかみ合ってない気がしますが、そこは触れないでおきます(ですので、下手な大阪弁には触れないでください)。 で、なぜ興味深いかといいますと、以前この本を読んだからです。 

(いつか本のレビューも書きたいです。。。)


この本の冒頭の解説によると、教育に関する会議などを行うと「私の経験上・・・」という言葉がよく出るそうです。日本を含む現代の先進国では、教育を受けたことのない人はほぼいません。そこで、みんなが専門家風を吹かせて、「私の経験上・・・」という形で発言するそうです。例えば、「私の経験上、少人数制の教育は有効だ」とか。。。 


(こういう発言は経済や医療の政策決定の場では基本的に出ない。とも書かれています。なぜなら、「その発言の根拠を示してください」という突込みが入ると「私の経験です」と言っても相手にされないからです。) 


それに対して、近年、教育の世界でも『Evidence Based Education』という言葉が使われるようになったそうです。 そのエビデンスになるのがランダム化比較試験なんだそうです。


なんと、政府などの主導で、多数の学校に協力を仰いで、生徒をランダムにグループ分け(例:少人数クラスに所属するグループ vs 通常規模のクラスに所属するグループ)して、その成果を比較するという社会実験を行っているそうです。。。。(この政府のノリ、すごいな~と思います。もしも、日本で同じことをやろうとしたら、通常規模のクラスに所属させられた生徒の保護者が暴動を起こしそう・・・(*_*;))


 ちなみ、この研究の結果は、『クラスの規模は生徒の成績に影響を及ぼさない』そうです。ただし、『貧困層や成績の悪い生徒に限っては、少人数クラスは効果あり』というサブグループ解析の結果があるそうです。サブグループ解析の結果はどこまで信頼できるか議論の余地がありますが、少なくても『優秀な生徒を少人数で教育しても、特に追加メリットはない』位は言えそうです。・・・・・・・オモシロ(^^♪ 


で、この本の中で、同様の社会実験として、先生への成果報酬制度は生徒の成績向上に有効か?という実験が紹介されています。 2000年代後半にテネシー州で約34の中学校の学生約2万人と296目に教師を対象にして『POINT』という試験が行われたそうです。『担当したクラスの生徒の成績上昇に応じて最大1万5千ドルのボーナスが支払われる』そうです。 

その結果、成果主義の導入による成績向上効果はなかったそうです。 



ここからは補足として少しややこしい話です。。。ただし、一度支給されたボーナスの一部を生徒の成績によって、『返還』しないといけないという条件だとまた少し違いが出るとも書かれています。人は100万円のボーナスを貰ううれしさよりも、一度もらった100万円を失う痛みの方を強く感じるようになっています。この話は『進化論』とか『行動経済学』という学問が絡んで面白いんですが、長くなるので割愛します。 


長くなりましたので、次回に続きます。


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 理学療法士 倉形裕史

Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

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