おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
何回かに分けて理学療法士の診断、クリニカルリーズニングに関して書いています。
前回の記事です。
下記の項目に関して書きます。
1.『診断』と『クリニカルリーズニング(臨床推論)』とは何か?
2.リハ専門職は診断を行うか?
3.リハ専門職の『クリニカルリーズニング(臨床推論)』はどんなものか?
4.私が感じていたリハ専門職の『診断』と『クリニカルリーズニング(臨床推論)』に対する違和感。
5. 以上を踏まえて、私がどのように考えたか
6.具体的な疾患を例に挙げた説明
昨日は、5で終わりました(*_*;。。。
今日は6を書きます。ようやく最終回です(;’∀’)
6.具体的な疾患を例に挙げた説明
腰痛を例にあげます。
腰痛に限らず、いくつかの外傷や疾患にクラシフィケーション(classification)というものがあります。
簡単に言うと、検査の流れなどがフローチャートのようになっていて、この方法に従って検査をすすめることで、効果の最も期待できる治療法にたどり着けるというものです。
腰痛のクラシフィケーション(classification)は有名なものにピッツバーグ大学の研究チームが行ったものがあります。
この論文はかなり強い調子で、『ガイドラインが推奨する治療法より、うちらのclassificationを使った方が結果が良いですよ。』と言ってますね。。。(;’∀’)
この論文の中で取り上げられているガイドラインは1994年にアメリカで公開されたthe Agency for Health Care Policy and Research(AHCPR)によるガイドラインで、かなり古いものではありますがパッと見ると大枠は現在のガイドラインと似ている気もする。。。
ちなみにこのクラシフィケーション(classification)の評価には、動作観察という項目は含まれていません。
なぜ、観察をしないかというと、観察の結果によって、治療法が変化しないからです。 もしも、動作観察の結果によって治療法に変更があるならば動作観察は当然評価項目に含まれるべきです。
具体的な流れ
前提:質の高い臨床研究によって、有効であると確認された対象となる腰痛が少しづつ異なる治療法が、A~Hまであるとする。
①医師により重篤な疾患が除外される。
②リハ専門職によってどの治療法に反応する腰痛かに分類する。
この場合は、従来の動作観察よりも『鬱の有無を調べる評価』とか『社会的な背景』とか『年齢』などの方が重要視されるかもしれません。
③推奨される治療法がいくつかピックアップされたら、
・その治療法は目の前の患者さんに適応があるか?
・患者さんの希望に一致するか?
などで治療の適応を考えて、現時点で最も効果の期待できる治療法を決定して患者さんに適応する。
リハ専門職の『診断』は、腰痛の原因を探ることではなく
・治療法Aに反応しやすい腰痛
・治療法Bに反応しやすい腰痛
のように、まずは治療法ありきで分類していく。
④どのリハビリ治療法にも反応しなそうな腰痛に対してバイオメカニクスに基づく完全オーダーメイドかつ担当したリハ専門職オリジナルのリハビリが提供される。
という流れにするのがよいのではないかと個人的には思います。。。
おそらくバイオメカニクスに基づくリハビリの適応は全てのリハビリ対象腰痛患者のうち10%以下になるのではないかと思います。 ただ、どのリハビリにも反応しなそうな腰痛患者は、メンタルの問題も含まれている可能性が高いので、バイオメカニクスに基づくリハビリよりもメンタルヘルスに関わる科への受診が優先されるかもしれません(;’∀’)。
なぜ私が、現在一般的に用いられている『バイオメカニクスに基づたクリニカルリーズニングに基づくリハビリ』の優先順位をここまで下げるのかと言うと、腰痛に対しては、『バイオメカニクスに基づくリハビリ』が他のリハビリに比べて有効だというデータはないからです。ちなみにガイドラインで推奨されている『あまりバイオメカニクスを考慮しないリハビリ』の方が有効だというデータはあります。
複数の治療法があるならば、確率の高いものから行われるのが妥当だと私は考えます。
リハ専門職は、現存するエビデンスを用いて『原因』ではなく、最適な『治療法』を探しましょう。
こういう疫学的な考え方に基づくリハビリが恐らく、最良の『痛みと機能障害の改善』と『再発率の低下』を導けますよ。。。 という主張が支持されるかはわかりません。
誰か他にも同じか似たようなことを考えている方もたくさんいらっしゃるでしょう。チラッと上記の論文を読んだら、腰痛のclassificationの背景にある考えなんかは、かなり似てるし・・・・。。。
この様なアイディアが世界のスタンダードと一致するのか?離れているならどの程度離れているのか? この辺りも、こちらのコースでディスカッションしてきます。
長々と続いたシリーズも今回でおしまいです<m(__)m>
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
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