おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
今日は、少し時間があったので、気になっていた疑問を調べてみました。
『手術後の術創に対するマッサージは、術創の治癒に効果があるか?』
というものです。以前勤めていた病院では股関節置換術や膝関節置換術などを含めて、様々な術後の患者さんを担当していました。その中で、術創部に対するマッサージを行っていました。
他の病院に勤めているセラピストとこの件に関して意見交換したことがないので、どの程度一般的な手法なのかはわかりません。
私個人は、『効果あるのかな?』と疑問だったので、ホントに軽くだけやって、すぐに次のメニューに移っていました(*_*;。
Pubmedを使って調べた結果、
現時点では
『術後の術創へのマッサージは、行う必要がない』
という結論になりました。
この結論に至った流れを書いていきます。
まず、行っていたマッサージ方法として、
方法
クリッピングされた創部に対して・・・
*傷がふさがってない場合はグローブをします。
①創部に離開ストレスが掛からないように指で創部を軽く挟む(離開ストレスというのは、創部が離れて傷口が開く方向のストレスのことです)。
②指で軽く創部をつまむような感じで、創部がくっつく方向の力を軽くくわえる。
③創部周囲に過度のメカニカルストレスが掛かることを防ぐ、患者の疼痛が大きくならないように愛護的に行う。
④指の動かし方としては、中枢方向へクルクル動かす感じ。
実施方法のイメージはこんな感じ。
関節可動域練習や自動運動の準備(?)のような位置付けでした。
狙っている効果としては
①表皮と皮下組織の癒着を防ぐ
②四肢の切断例に対しては、切断部の皮下の神経の変性を防ぐ
③創部への血流を増やす
④創部の浮腫の軽減
などでした。
この結果、
・創部の早期治癒
・皮下組織の癒着の予防
・関節可動域の改善
・浮腫の軽減に伴い下肢筋力の発揮が容易になる
などが期待できるとリハチームは考えていました。
これらから私が考えていたのは、
・確かにメカニズムとしてはそのような効果は期待出来得ると思います。
しかし、
1. 効果があるとして・・・・、
①その効果は臨床的に意味があるほど十分に大きいのか?
②コストと比較して正当化されうるのか?
③セラピストが行う必要があるのか(患者自身や家族が行っては効果が期待できないのか)?
2. 効果がないとして・・・・、
①何か有害な副作用はないのか?創の治りが遅れたり、感染が増えたり。
例えば、褥瘡の管理では、褥瘡の周囲はマッサージしないことになっていますし(この管理方法の根拠となっているデータや論文は、実は知らないのですが)。。。
褥瘡と術創では発生過程(発生機序なんて言います)が違うので、マッサージは、褥瘡には効果がないけど、術創には効果があるということも考えられます。
そこでこの疑問に関してPubmedを使って、検索をしてみました。1時間程度かけて、重複も合わせて約600タイトルほどの論文を調べてみました。
結論から言うと、この疑問に対して検証された質の高い論文は全く見当たりませんでした。
長くなりましたので、明日に続きます。サクッと一回で書けると思ったテーマなのですが、思ったより長引きました。核心に入る前の文章が長すぎる。。。( ;∀;)
明日は、検索に使ったワードや検索結果に関する大まかな内容を書きます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます
理学療法士 倉形裕史
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