PubMedで調べた疑問:手術後の術創に対するマッサージは、術創の治癒に効果があるか?②

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


前回から 

『手術後の術創に対するマッサージは、術創の治癒に効果があるか?』

 に関して記事を書いています。


 Pubmedを使って調べた結果、 現時点では

『術後の術創へのマッサージは、行う必要がない』 

という結論になりました。 


私が検索したワードとその検索結果です。 

①『surgical incision + massarge』 → 3445793編 

とても調べられる数じゃないので検索式にrandomizeを加えることにした。 


 ②『surgical incision + massarge + randomize』 → 9編 


③『operating + massage』→ 121編


④『operative wound + massage』 → 104編 


⑤『operation massage + randomized』 → 450編  


②~⑤の約700編のタイトルをチェックして、関連がありそうか迷ったものはアブストラクトも読みました。Pubmed先生は親切なのでこのように少しだけ変えた検索ワードだと、重複する論文も多く見つかりますが、今回は気にせず調べました。 

このワード選択が適切だったかはちょっとわかりませんが。。。  


探していた研究としては 

P:何らかの手術後の患者 

E:術創周囲の皮膚へのマッサージを行うと 

C:マッサージを行わなかった患者と比較して 

O:創の治癒が早まる、創の痛みが早く軽減する、機能回復が早まる(皮膚の癒着が防げることで関節可動域の改善が早まる、術周囲の浮腫が早く改善することで関節周囲の手術であれば筋力発揮がしやすくなるなど) 

デザイン:ランダマイズドコントロールドトライアル(RCT)  

といった内容の研究を期待していました。 

ですが、前回の記事でも述べた通り、関連する質の高い論文は見つかりませんでした。  


この検索ワードを使った検索では、論文のタイトルから推測する限り、多かったのは 

①心臓マッサージに関する論文 


②ICUなどで術後の管理の一環としてマッサージをすることで患者の痛みが改善するか?   

ICUでの管理では患者は多くのチューブに繋がれていたり、体動が制限されたり、睡眠の問題などで苦痛を強いられます。このような状態を軽減するためにマッサージを使うということの様です。創のマッサージとは少し違いますね(;’∀’) 


③乳がんの手術後のリンパマッサージに関する論文 

でした。 


私が見落としとしていて、面白いなと思ったのが 

『The role of massage in scar management: a literature review.』 

という論文で、創部のマッサージは創の見た目の改善につながるか?についてまとめた論文です。


システマティックレビューでないので、エビデンスとしては高くないのですが、かなり弱い調子ではありますが、研究チームは創の見た目の改善に、マッサージが有効であることを示唆しています。ただ、方法も実施時間も研究ごとにバラバラすぎて結論を引き出すことは困難だったようです。


また、外傷による創よりも手術による創の方がマッサージの恩恵をうけやすいのではないか?と言っています。ただこれはあくまで経験談レベル(anecdotally effective)であると言っています。 


面白い(^o^)/。確かに、人によっては、創部がきれいに治るかどうかは大切な問題ですもんね。  


ここまで書いてきて思うのは、

『そうは言っても、全く創部のマッサージをやらないわけにはいかないよね(;’∀’)』

ということです。結局ここに落ち着くのか(*_*;と自分でも思いますが。。。 

昨日、友人のコメントでもあったのですが、患者さんに創部のマッサージを頼まれたら、全くやらないわけにはいきません『効果がないからやりません』では通らないと思います。リハビリも当然サービス業の要素はあるので。 

『他の療法士はたくさんマッサージしているのに、私の担当の療法士さんは全くマッサージしてくれない』というのは患者さんの満足度が下がりそう。。。 

それに、患者さんはちょっと痛い治療(?)を好きな人が結構多いですし。。。。 

なので、現実的な落としどころとしては、創部の状態のチェックと患者さんとのコミュニケーションを兼ねてごく短い時間だけマッサージをするというところでしょうか。。。で、長時間のマッサージを求められるようなら、自主トレーニングの様な感じで自身で行えるようにお教えするとかですかね。ただ、現段階ではマッサージに10分、15分と掛けるのは合理的でないと言えそうです。 所属しているチームで好まれていたリハビリ内容を見直してみるというのも時に必要かもしれません。 



 今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 







 自分と似たような考えを持った医療職の方が下記のキーワードで検索した際に、繋がりやすくなることを目的に下記のキーワードを書くことにしました。やや見苦しいですがご容赦下さい。 EBM、Evidence based medicine、EBPT、Evidence based physical therapy、根拠に基づくリハビリテーション、rehabilitation、リハビリテーション、理学療法、physical therapy、physiotherapy、統計、statistics、研究デザイン、study design、留学、study abroad、ロンドン、London、ユニヴァーシティー カレッジ ロンドン、University College Londn、UCL、ロンドン大学、University of London 

Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

キャリアゴールは『日本を含む全アジア地域で、全てのリハビリ対象者が適切な価格でエビデンスベースドのリハビリにアクセスできる社会を実現する』ことです。 ゴール達成のために、勉強したことをシェアしたり、同じような活動をしている方とコミュニケーションをとることを目的にサイトを作ってみました。 ゴールやそこまでの道のりが少しでも被る方は、是非一緒に何かやりましょう。

0コメント

  • 1000 / 1000