脳卒中リハビリの評価にバビンスキー反射は必要ないと思います③

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


何回か、『脳卒中リハビリの評価にバビンスキー反射は必要ないと思います』ということに関して書いています。 前回はよくわからない例えをして終わってしまいました(*_*;。  


今回は、バビンスキー反射の評価に話を戻します。 

まず、

1.検査の性能 

バビンスキー反射の評価の性能は、メカニズムを議論してもしょうがないです。 評価・検査である以上、『数字』で性能を評価しなければいけません。 


そこで、評価の性能に関して調べたところ、検索に引っ掛かりました。 発症後早い時期にバビンスキー反射の検査を行った研究の結果です。

大分古い論文ですが、検査自体の歴史も古いこと、そこまで検査の精度が変わらないんじゃないか?と思い、そのまま引用します。


その結果、 


・特異度(実際は錐体外路がない人のうち、何%の人で正常所見が出るのか?):100% 


・感度(実際に錐体路障害がある人のうち、何%の人で異常所見が出るのか?):90% 


・カッパ係数は0.09~0.28です。複数の人が個別に検査を行うと、その結果はあまり一致しません。

 カッパ係数というのは、複数の人間が検査した時の結果の一致率を調べます。1.0が最大で、0.61以上であれば実質的に一致していると見なされます。 


・発症初期にバビンスキー反射が異常所見(陽性)だった50例のうち3例(6%)において、他の錐体路障害の兆候は変わっていないのに、バビンスキー反射の異常所見が消失した。 


・発症初期にバビンスキー反射に異常所見がなかった6例のうち2例(33.3%)において、他の錐体路障害の兆候は変わっていないのに、バビンスキー反射の異常所見が出現した。 



感度と特異度は、思いの外(といったら失礼ですが・・・)高いですね(^o^)/ 


ですが、複数の人が検査すると結果は一致しませんし、何よりも、病態の変化とバビンスキー反射の所見の変化が一致しません。 急性期に錐体路に障害があるかの診断を下す検査としての意味はあるかも知れませんが、それ以上の意味はなさそうです。 


 また、他に脳卒中を強く疑う所見(例えば片麻痺や言語障害や顔面の麻痺など)があるのに、「バビンスキー反射の検査結果に異状がなかったから脳卒中じゃない」と判断するというのは違和感がありますし、 逆に脳卒中の所見がない若い患者さんでバビンスキー反射の検査結果が異常だったからと言って脳卒中を疑い、緊急搬送するというのもおかしな話です。 


これだけ画像診断が発展した現代において、バビンスキー反射の検査がどこまで意味があるかは私には正直よくわかりません。 


また、日本と言うシチュエーションを考えてみます。 100万人当たりのCT,MRIの台数は日本は断トツトップです。人口比でなく絶対数となると人口の多いアメリカに首位の座を明け渡すことになりますが、CTなんかは、「ヨーロッパ中のCTを全部集めても日本にある台数の方が多い」なんて言います。 


ただ、これらの画像診断はコストが高いという弱点があります。バビンスキー反射の検査は簡単で安いです。  


こう考えるとバビンスキー反射の検査と言うのは、 

クリニカルセッティング:CTがない町の開業医のクリニックにおいて 

対象:緊急性がさほど高くない症例に対して 

使われ方:診断の根拠の一つにするために使われる 


という位の位置付けなのかもしれません。 他の所見で緊急性が高そうであれば開業医の先生はバビンスキー反射の検査をするまでもなく、CTやMRIのあるより規模の大きい病院に搬送するでしょうし。。。 


日本では、先進国の中でも突出してCTが普及していますので、余計にバビンスキー反射の評価に頼る場面と言うのは少ないかも知れません。。。

これは、バビンスキー反射の評価の全体に関わる話です。脳卒中のリハビリにフォーカスすればより一層、その重要性は下がると思われます。


 という辺りが①検査の性能に関する話です。 


長くなりましたので次回に続きます。 


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 



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