『○○法は現代の科学では証明できない』の誤解②

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


前回から、 臨床研究で良い結果が出ていないものの、長い間使われ続けている理論、治療法に関して聞くことのある『○○法は現代の科学では証明できない』というフレーズに対して書いています。  


タイトルのフレーズには医学研究に対する典型的な誤解が含まれています。  

その誤解は下記です 


① 臨床研究は、「○○法の真偽」に関しては調べていません 


②『○○法を勉強したことがない人間が意見を言うのはおかしい』→治療成績のデータに関して話すなら、全くおかしくありません。 

③ 個別化されたプログラムなので臨床研究にそぐわない→誤りです。個別化された治療法も臨床研究で効果を調べることができます 

④ ○○法は動作の『質』を改善する。臨床研究には『質』を評価する術がないのだから、○○法は評価できない。→誤りです。質の評価も可能です。また、そもそも質を評価する術がないなら、○○法を支持する人はどうやって「質」を評価しているのかわからなくなってしまいます。 

⑤ ○○法はアートなので、わかる人にわかって頂ければいいんです。→医学においてはそのような姿勢は許されません。 

⑥ ○○法に関する研究は現在進行中なので、間もなくエビデンスが出ます。→多分嘘です。もし講師の先生がそのことを真剣に信じているならば、その先生も本部の人たちに騙されています。 



今回は②に関して書きます。 

②『○○法を勉強したことがない人間が意見を言うのはおかしい』→治療成績のデータに関して話すなら、全くおかしくありません。  

以前、参加した有名な手技の勉強会で、その手技の効果に関して意見した際に、この様な事を言われた経験があります。 これは少し考えると変な話です。 


例えば、私はサッカーが好きです。ですので、野球が好きなサッカーをしたことがない人に『サッカーなんてつまんないよ』と言われれば『サッカーをしたことがないのにそんなことを言うのはおかしい』と思います。 

ですが、 「サッカーは日本国内では野球に次ぐ第二位のスポーツだ。競技人口と経済効果という点でサッカーは野球に劣る」と言われれば、データの真偽は確認するにしろ、「はい。そうですね。」と言います。 


その後で、近年のマーケットの伸びを示して 「でも日本国内でも急激に伸びているし、世界ナンバーワンのスポーツだから、近い将来日本でもトップのスポーツになりますよ」というような反論をすると思います。  


主観的な『〇〇法は素晴らしい』のような評価に関して、やったことがない人間が何かを言うのはおかしいかも知れませんが、治療効果をデータに基づいて話しているのに、 他のデータを示さずに、 「○○法は効果がないようですが?」と言われたことに対して、 「○○法の経験がないのに批判するのはおかしい」と言ってしまうのは,


「サッカーは野球に比べて競技人口が少ない」と言われたのに対して、「サッカーをやったことがないのにそんなことを言うのはおかしい」と反論するようなもので、議論がかみ合っていません。 データに基づいた話であれば、経験に関係なく話しができます。 


それに、もし経験したことがない治療法に関して意見が言えないのであれば、どの治療法が現時点で最も優れているか?を話すためには『医学の祖』と言われるヒポクラテスの時代に行われていた治療から、現代のものまで全て経験しなければいけなくなってしまいます。 

 ヒポクラテス先生の肖像(Wikipedia より)


これではいくら寿命が延びたとはいえ、一人の治療者が、全てを経験する前に引退してしまいますし、コレラなどの感染症に対して水銀の様な毒物で治療を行うといった明らかに有害な治療法も行う必要があり、ナンセンスです。  


この様な理由から、『経験者以外は語るな。』という主張は『おかしいな』と警戒するべき主張であると思います。 


長くなりましたので次回に続きます。 



今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 






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