小倉あんライブラリー:評価の高い臨床研究は、臨床現場でも非常に役に立ちます

こんばんは。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。


今日もシステマティックレビューの話題です。


システマティックレビューにはいくつかの種類があります。

大きく分けると


①治療に関するレビュー
②検査法に関するレビュー
③副作用に関するレビュー


です。


私が今取り組んでいるのは治療に関するレビューです。

治療に関するレビューを行うにあたっていくつか、論文の質を評価するためのツールがあります。

① Cochrane

②  PRISMA

などのツールが有名です。


これらのツールは論文の質を評価するためのものとしても有用ですが、医学に関する情報の質を評価するのにも役立つと感じました。


『研究』と『実際の臨床』にはギャップがあります。また必ずしも、『多くのリハ専門職に支持されているリハビリの方法』が、研究者の間で高い評価を受けているわけではありません。
そこで、「研究と臨床でのリハビリは全く別物だ。」と考える方もいると思います。


しかし、実際は

『研究の世界で高く評価される臨床研究は、臨床場面での判断や行動に大きく影響を与えるもの』

です。つまり、『評価される研究』と『臨床現場で役立つリハビリ』というのは概ね一致していると考えて良いです。


『多くのリハ専門職に支持されているリハビリの方法』のうち、研究者の間で評価が低いものは、


①患者さんを用いた研究によって効果が否定されている

②他の方法と比較してコスト、効果で勝っていない(より安くて、効果が同等であったり、より効果があるものがある)

③そもそも、信頼できるデータがない


にも関わらず、宣伝の上手さで、多くのお客さんを惹きつけている。

などが考えられます。



余談

『いや、データなんて関係ない。私が患者さんに、そのリハビリを提供して、その時に良い効果が見られたことが何よりの証拠だ!!』と考える方は、こちらの記事をどうぞ。




上記のようなツールでは、研究の質を評価するために

①研究デザイン
②ランダム化がきちんとされている
③盲検化がきちんとされているか

などが評価されます。

そして、「その事がしっかりと論文の中に記載されているか?」も評価します。

しっかりと記載されているということは、研究グループが『自分たちの研究の質を高めるためにそれらの項目をしっかりと意識していた』ことを示すと考えるからです。


盲検化というのは、リハビリを提供する人、患者さん、検査をする人などが、誰がどの治療を受けたかを分からなくするものです。

これが、しっかりとされていないと、患者さんは、治療に対して「効果を期待」してしまうことで、実際以上の効果が出てしまうことが懸念されます。



では、患者さんに、『誰が本当の治療を行うかを伏せる』ことはわかるとしても、なぜその他の『リハビリを提供する人』や『検査をする人』にも事実を伏せる必要があるのでしょうか?

          ↓

①誰が本当の治療を受けるかをリハビリを提供する人が知っていた場合、態度の違いなどで患者さんが、自分が本当の治療を受けているか、偽の治療を受けているかがわかってしまう。


②リハビリを提供する人が、意識的、無意識的に、本当の治療を受けるグループを手厚く治療したり、アドバイスをしてしまう。


③検査をする人が、誰が本当の治療をしたかがわかってしまうと、検査の結果が、治療効果が有効か無効かの境界線上にある時に、判断に影響してしまう


などがあります。


「いやいや、研究する側はプロなんだから、どの患者さんがどの治療を受けるかがわかっていても、関係ないでしょう\(-o-)/」と考える方もたくさんいらっしゃると思いますが、盲検化がしっかり行われなかったことで結果が歪められてしまった例はたくさんあります。



またランダム化は、治療を受ける患者さん、偽の治療を受ける患者さんにグループ分けをする時に、無作為に分けることを言います。

もしも作為的に分けてしまうと、

①意識的、無意識的に、『良くなりそうな患者さん』を本当の治療を受けるグループに、『良くならなそうな患者さん』を偽の治療を受けるグループに割り当ててしまう


②患者さんの、治療前の健康状態などが、両方のグループで一致しない。そうなってしまうと、もはや、治療効果があったのか、他の要因によって治療後の健康状態に差があるのか、わからなくなってしまいます。


などが起こってしまいます。



この手順は薬やその他の医師による治療にも同じように使われます。


このような事に少し触れると、私達が普段受けている標準治療がいかに厳密に効果を調べられた上で生き残ってきたものなのかがわかります。

自分か提供しているリハビリが、どの位の厳密さで効果が証明されているものなのかを振り返ってみるのは、とても良い勉強になるのではないかと思います。


また、セミナーに参加したりした時に、講師の先生の話は、どのようなレベルの根拠に基づいた話なのか?

先輩の指導は?
ブログの記事は?
など対して、この様な視点を持つと、『自分の好み』や『自信をもった言い切り型の説明』に過度に引っ張られずに、いつも決まった手順で情報の価値を判断出来るのではないかと思いました。


やったことがない事をやってみると、発見があります(当たり前ですが(;'∀')。。。)

また良さそうなツールが見つかれば共有させて頂きます。


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 









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