【読書】Bad Pharma

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。


繋がりました。


以前、『バッドサイエンス』という本を読みました。邦題は『デタラメ健康科学』です。数年前にイギリスでベストセラーになった本です。日本語版と英語版の両方を持っていて、読みました。



また、以前の記事で、TEDと取り上げられていた、疫学に関する興味深い動画として、このようなものを取り上げました。


最近気がついたのですが、この本の作者と動画の中で喋っている方は同一人物のようです。

ベン・ゴールドエイカーさんというイギリスでとても有名な医師の様です。もしかしたらその他のヨーロッパの国でも有名なのかもしれません。


お話も非常に切れ味が鋭い方ですが、お医者さんであっても、何か特別な実績がある方でないとなかなかTEDでは話せないでしょうから、気にして調べてみればもう少し早くわかったかも知れませんが。。。


今回紹介したい本は、同じ作者の『Bad Pharma』という本です。日本語訳も出ています。邦題は『悪の製薬会社』です。


巷(?)には根強い、医療批判があります。一方で代替医療に対して厳しく批判する人もいます。

この作者の方が面白いなと思うのが、前に読んだ『バッドサイエンス』は、代替医療に対する鋭い批判で、この本は製薬会社を批判する本なんです。


製薬会社批判は、医療批判と似たニュアンスがあります。

この本では、やみくもに製薬会社や医療を批判するのではなく、製薬会社が自社の薬に有利なデータを公表するために、どのような手を使ったかを書いています。論文として発表する以上は、代替医療の関係者が行うような、お客様の体験談などをデータに使うことは出来ません。


実際に行われたことの例として


① 競合となる薬の容量を意図的に低く設定して、自社製品の効果が大きいように見せかける

② 競合となる薬の容量を意図的に大幅に増やして、自社製品の副作用が小さいように見せる

③ 自社製品に不利なデータは公表しない(出版バイアス)


研究不正とは必ずしも言えないものの、医師や患者さんを誤解させるようなデータで自社製品が有利になるようにする。ということを製薬会社は行ってきたとゴールドエイカーは書いています。



現代医療に過度に批判的な方というのは二種類いらっしゃって

① 純粋に、基礎的な科学的思考ができず、うさんくさい理論を信じ込んでしまう方

② この本に書かれているような、製薬会社の不正(違法でないまでもグレーな行動)に対して失望している方

です。


この本は、②の方のスタンスに近く、かつ科学的根拠に基づいてまとめられた本です。

『デタラメ健康科学』では、代替医療を科学的根拠に基づいて斬り、『Bad Pharma』では、製薬会社、現代医学を斬る。


両極端(?)な本を書きつつも、姿勢がブレているわけでないのが素晴らしいんです。自分の意見や好みで批判しているわけではなく、論文などの信頼できるデータをもとにお話を展開していらっしゃいます。


どちらの本も、楽しみながら、少し怖くなりながら、批判的に情報を吟味するプロセスを作者と一緒に体験できる、非常に興味深い本です。


帰国したら日本語版も買う予定です。英語力が足りないせいで、分からない箇所があるためです。日本語訳とも照らし合わせながら、内容もしっかりと読み直そうと思ってます。


簡単な内容の紹介はまた違う記事でしようと思います。


今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 










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