おはようございます。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
前回の続きです。
『栄養と廃用』というキャッチフレーズ(?)に関して書いています。
前回は、栄養に関する問題を克服するためにどのような職種が貢献し得るか書きました。
今回は、廃用に関しての内容から書きます。
廃用に関しては、専門家であるリハ専門職が貢献できる内容が栄養と比較すれば多くなります。
- どのような目標設定を行えば、利用者さんが主体的に取り組む気持ちになれるか?(本人、理学・作業療法士)
- どのような声掛けを行えば、利用者さんの行動変容を促すことができるか?(理学・作業療法士)
- どのようなメニューを組めば、利用者さんの苦労は最小限で、最良の結果を最短で達成できるか?(理学・作業療法士)
- 定期的に向上した内容を利用者さんにフィードバックする(理学・作業療法士)
- 向上したことを踏まえて、練習の難易度を再調整する(本人、理学・作業療法士)
- リハ場面で行えるようになった動作を日常的に行えるようにご家族を含めて検討する(本人、家族、理学・作業療法士)
*カッコの中に書いたのは、主に専門性を発揮することが期待される人達です。
特に気を遣うべきなのは家族と利用者本人に「いかに日常生活の中で動作を行ってもらうか?」を決める時です。起き上がる、車いすに乗り移る、歩くなどの動作は転倒の危険性(リスク)をはらみます。利用者さんの幸福度を最良のものにするためには、時にはこのリスクを受け入れないといけません。
なぜかというと、転倒のリスクを0にするのは簡単で、ベッドに寝かせたまま、縛ってしまえばいいわけです。こうすれば転倒する可能性は限りなく0です。ただし、多くの利用者さんやご家族はこのような生活は望まないです。
かといって、無理な(介助が大変な)動作のサポートを家族にお願いしては、ご家族の幸福度が下がってしまうかもしれません。それに、週に何回も転んで生傷が絶えないなどというのは困ります。ですので、以下のような内容をみんなで話合う必要があります。
- ゼロリスクは求めないほうが良い
- 許容しうるリスクはどの程度の動作なのか?
- その動作に介助が必要な場合、サポート体制は十分か?
ここは、ご家族の信頼を得るなどのアートが必要で、利用者さんそれぞれ、家族それぞれの状況の違いを考慮したうえでの提案が求められます。
廃用と栄養に関する問題点を潰して全般的な体力がつけば、今まで書いたメリットに加えて、
- 咳が力強くなって痰が出せるようになったり
- 声がしっかり出るようになってコミュニケーションが取りやすくなったり
- 座っていることが苦じゃなくなれば、長い時間座っていられて食事も余裕をもって食べられるようになり、飲み込みにもいい影響が出たりする。
と、いいことづくめです。
こんなにいいことづくめのことなら、『どんなに凄いリハビリをやるんだろう?』と思われるかもしれません。ですが、やることは単純です。
- 現在報告されているエビデンス(研究成果)に基づいて、
- 利用者さんの要望に合わせながら、
- 『これができるようになったら最高!!』と思えるゴールを一緒に探して
- そのために獲得しないといけない能力を明らかにして
- 時に補助装具などの力を借りながら
- コツコツと筋トレしたり、長い距離を歩いたりします。
頭では私たち全員が理解していますが、リハビリなどは、簡単なことをコツコツと泥臭くやることが結果、一番有効であることが多いです。
たくさんの複雑で、即効性の期待できる(様な気にさせてくれる??)、勉強のし甲斐のある理論がリハビリ業界にはたくさんあります。でも、まずは誰でも出来てかつ科学的に見て効果の期待できる介入をみんなが選択するようになると、患者さんや利用者さんへ提供できる価値が高まるんじゃないかと思います。
今日も、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
理学療法士 倉形裕史
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