温水やホットパックで組織を温めても可動域は改善しません(多分)。①

こんにちは。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。


 今日は、温熱療法と関節可動域に関して書きます。


 結論から言いますと、 

『温水やホットパックによる加熱は、関節可動域改善に役立たない』です。



 補足です (専門家でない場合は読み飛ばしていただいて差支えありません)。

 温熱療法には、表面に近い場所を温める「表在性温熱」と少し深い場所を温める「深達性温熱」というものがあります。ホットパックや温水による加温は「表在性温熱」です。 今回の話はこの「表在性温熱」限定です。「深達性温熱」には効果が期待できます。 

補足終わり。 



病院で働いているリハ専門職であれば、一度は、これらのもの(物理療法なんて言います)を用いて、患者さんの関節可動域の改善を図ったことがあると思います。ですが、温水やホットパックは、関節可動域拡大に役立ちません。 


ちなみに、お風呂上りに体が温まった状態でストレッチをすると関節可動域が広がりやすいというのもおそらく迷信です(;’∀’) お風呂に入る前でも、後でもストレッチの効果に差はないと思います。


 私もこのことを知った時に、ショックでしたので、読んで頂いているリハ職種の方にもインパクトがあるのではないかと思います。 


でも、根拠はあります。 


『組織を温めることでストレッチ効果が大きくなる』という話の根拠とされているのがこの論文です。 


Lehmann JF, Masock AJ, Warren CG, et al : Effect of therapeutic temperatures on tendon extensibility. Arch Phys Med Rehabil 51 :481-487, 1970 


かなり古い論文ですね。。。。 


下記の図を教科書などでご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。 

     (沖田実、関節可動域制限(初版)、三輪出版、P171 より引用)


ザクっと書くと、


 腱組織は・・・、

 ①25℃の状態では、引っ張る力を強めても組織の長さは変わらない。

 ②45℃に加温すると引っ張る力に合わせて、組織が伸びる。 



ちなみに腱組織はコラーゲンが主成分です。コラーゲンはたんぱく質です。たんぱく質は45℃位で変性が生じてくるため、この実験結果自体は信頼できるのではないかと思います。


じゃあ、やっぱり温熱による関節可動域の改善効果は期待できるんじゃないか!!と行きたいところですが、一度立ち止まる必要があります。


 実験結果自体は信頼できると思いますが、この論文を温熱療法の根拠として採用するのはちょっとナンセンスです。。。。 


長くなりましたので次回に続きます。次回はなぜ、この実験結果は実際のリハに採用できないかに関して書きます。 


今日も、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。 

 理学療法士 倉形裕史

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