EBPTの5ステップ&ステップ1 問題の定式化

おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。 


Evidence Based Physical therapy(EBPT)が重要だと思うということをちょくちょく書いています。 

今日は、EBPTの手順に関して書きます。 

EBPTは5つのステップに分かれています。 


ステップ1:問題の定式化 

ステップ2:問題についての情報収集

ステップ3:情報の批判的吟味

ステップ4:情報の患者への適応 

ステップ5:1~4のステップの評価 


という流れです。 


今日は、ステップ1に関して書きます。 


情報の定式化とは、

臨床場面において直面する問題を調べることのできる形に整理することです。


たとえば、

「膝の痛い人がリハ室に来ました。どうしたらいいか?」という問いでは、効果的な検索やEvidenceに基づく判断はしようがないわけです。 


では、どうしたら定式化できるのか? 

まずは、解決したい問題の種類を明らかにします。 


・診断なのか?→膝が痛む原因を知りたいのか? 

・自然経過なのか?→このまま特に介入を行わなかった場合にたどる経過が知りたいのか? 

・治療効果なのか? 

・副作用なのか?→リハビリを行うことで疼痛が悪化することはあり得るのか? 



明らかにしたい問題の種類が決まったら、PICO(もしくはPECO)(ピコもしくはペコ)という道具を使って、患者さんの情報を整理します。 


PICO(PECO)とは 


P:patient どんな患者に

 I(E):Intervention(Exposure) 何をすると 

C:Comparison何と比べて 

O:Outcome どうなるか? 



という形にまとめることです。


Exposureは『暴露』という意味で、ここでは治療と同じような意味合いで使われています。治療に暴露するという言葉は少し違和感があるかも知れませんが、疫学上の言葉の使い方として『暴露』という言葉自体にはプラスもマイナスの意味合いもないです。 


治療の様な良い影響を与えうる行為にも『暴露』しますし、喫煙の様な悪い影響を与えうる行為にも『暴露する』という言葉を使います。 



それから、患者さんが抱えている疾患や外傷に対する背景知識を用いて、意思決定に関連しそうなパラメーターを考えて、PICOに適宜加えます。 

もし、上記の膝の痛い患者さんに『変形性膝関節症』という診断がついていたとしたら、関係するパラメーターは、 

①年齢 

②性別 

③痛みの発生した状況(受傷機転) 

④既往歴 

⑤痛みがいつ発生したか 

⑥痛みの程度
などでしょうか? 


上記を踏まえてPICOの形に当てはめると、例えば ・・・


P:2週間間に増悪した中等度の膝痛を訴える60代男性変形性膝関節症患者に 


I:抗炎症剤+下肢筋力強化を中心とした監視下での理学療法を行った場合 


C:抗炎症剤による管理だけが行われた場合と比較して 


O:痛みの回復期間はどう変化するか? 


というような形になります。 


これに一つ加えるとしたら『T:Type of Design』として求めるべき研究デザインです。

ここで挙げたPICOであれば治療に関する問題なので、Randomized Controlled Trial (RCT)のようなデザインが適しています。 

このようにPICOの形で日々の疑問を整理すれば、検索可能な問いになります。 



最後に、臨床の話と少しずれますが、このような形で日々の疑問を整理してメモなりを残すことで、 


データベースなどを使って調べる
 

  ↓ 

調べたけど、誰も研究した人がいない
 

  ↓ 

臨床研究テーマになる 


と言うような流れで治療と研究がリンクします。 


何もない所から研究テーマを考えようとすると、どうしても研究のための研究と言いますか『これ、最終的に誰の役に立つんだろう?(;’∀’)』というようなテーマになりがちです。臨床場面で感じた疑問からスタートすれば、同じ疑問を他の人も感じている可能性が高いので、多くの人の役に立つ研究テーマになるような気がします。 


というのがステップ1です。 



今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

 理学療法士 倉形裕史 







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