おはようございます。University College London (UCL)の理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
前回から、低炭水化物食に関する記事を書いています。
前回は、体重減少に関して書きました。
今回は低炭水化物食の健康への長期の影響を書きます。
取り上げる文献は下記です。
雑誌情報:BMJ. June; 344:e4026. doi: 10.1136/bmj.e4026. 2012 PMID 22735105
タイトル:Low carbohydrate-high protein diet and incidence of cardiovascular diseases in Swedish women: prospective cohort study
著者:Pagona Lagiou, Sven Sandin, Marie Lof et al.
【Impact Factor】20.7 (2016年)
【Abstract日本語訳】
目的
蛋白質摂取を増やした低炭水化物食の心血管の健康に対する長期的な効果を明らかにする。
研究デザイン
①前向きコホート研究。
②研究のセッティング: スウェーデン、ウプサラ
③対象者:ランダムに選出された43396人のスウェーデン人女性。ベースライン時の年齢は30~49歳。食事に関する詳細なアンケートに記入し、その後平均15.7年の間追跡された。
④メインアウトカム: 心血管疾患の診断(全国規模のデータベースによって確認された)。このデータに関して、低炭水化物-高タンパク質の食事スタイル(10%炭水化物摂取量を減らす、タンパク質摂取量を増加させる)の各群における心血管疾患の全体数と診断区分(文中より:急性心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症などの疾患別)のデータが示された。 分析にあたりエネルギー摂取、飽和脂肪酸と不飽和脂肪の摂取量、いくつかの食事以外の変数を調整した。
結果
10%炭水化物摂取量を減らす、タンパク質摂取量を増加させる、低炭水化物-高タンパク質スコアを2単位増加させる食事スタイルの各群は、心血管疾患全体の発生を有意に増加させた。心血管疾患の発生数は1270例であった(注文中より:複数の心血管疾患を診断された場合はそれぞれの疾患で1ずつカウントされる)。罹患率比の増加はそれぞれ1.04(95%信頼区間 1.00~1.08)、1.04(1.02~1.06)、1.05(1.02~1.08)と見積もられた。罹患率比の増加はあらかじめ決定された5つの疾患全てで同様の傾向を示し、虚血性心疾患(n=703)、虚血性脳梗塞(n=294)、脳出血(n=70)、くも膜下出血(n=121)、末梢動脈疾患(n=82)であった。
結論
習慣的に用いられている、炭水化物の性質もしくは蛋白質の摂取元を考慮しない低炭水化物-高タンパク質食は心血管疾患のリスク増加と関連する。
ここから、低炭水化物食に関するまとめです。ネットから引っ張った知識もあるので、やや信ぴょう性が乏しいところもあります。
『低炭水化物食』に関して少し歴史を紐解いてみますと、1990年代にアメリカで議論が始まったようです。ロバート・アトキンスさんという循環器内科が提唱したアトキンスダイエットというのがもとにあるようです。アトキンスダイエットは、糖質制限でのダイエットの一種です。日本語版の本もある模様です。
現時点までの流れとして
①低炭水化物食は、通常バランスの食事と比較して短期(6ヵ月程度まで)の減量効果は差があるというもの、ないというものがあり、現時点でも結論は出ていない。
②1年以上の介入では多くの研究で減量効果は差が無くなる。
③10年以上の長期間のコホート研究では、心血管疾患、総死亡が共に増加する。(私が確認できた論文は3つでしたが結論は一致していました。)
概ねこのような流れと思われます。
なお、その他の検討点として
・低炭水化物食で炭水化物を脂質に置き換える場合、脂肪酸の種類によって全死因死亡率や心血管疾患(CVD)死亡リスクが異なる。
この点に関しては、日経メディカルオンライン2014.9.20からの引用です。また、論文によるものではなく、第50回欧州糖尿病学会(EASD2014、9月16~19日、ウィーン開催)で発表された内容なので、情報の質はここまでの内容と比較してかなり劣ります。
ただ、今はもしかしたら論文になっているかも・・・(興味のある方はお調べください)。
長くなりましたので次回に続きます。次回は日経メディカルオンラインの記事をまとめます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございます。
理学療法士 倉形裕史
次回へのリンク
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